★タイトルにある「IL TEATRO ALLA MODA」は、バロック時代の作曲家・音楽評論家であるベネデット・マルチェッロが1720 年代終わりに出版した、当時の音楽・オペラをめぐる様々を風刺した書籍(邦訳書が出版されており、その書名は『当世流行劇場』)。この本の中でマルチェッロは当時最大の人気を誇っていたヴィヴァルディを攻撃しています。貴族階級に属し、正統的な作曲技法のみを重んじて作曲するマルチェッロとは対照的に、ヴァイオリンを自ら縦横無尽に弾き、劇場主らと組んで興業の部分にまで関わるなど、いわゆる商売の部分にも積極的だったヴィヴァルディ。ヴィヴァルディのこれみよがしなヴィルトゥオジティ、作曲技法、オペラの派手な演出などをマルチェッロは本の中でこっぴどく書きました。しかし、書物から300 年ほどたった今なお、ヴィヴァルディの音楽の新鮮さ、才気煥発さ、鮮やかなコントラストなどが私たちを楽しませてくれているのは周知の事実。ベイエ率いるリ・インコーニティは、ヴィヴァルディの様々な作品を新たなひとつの舞台作品の物語のように仕立て、ヴィヴァルディの音楽の斬新さや多様性をあらためて私たちに感じさせてくれます。