2011年録音のデビュー作で、日本でも一躍、注目を集めたクラウディオ・フィリッピーニ・トリオの新作。イタリアの中でも圧倒的な知名度を誇るCAM JAZZからデビュー、ライナー・ノーツはエンリコ・ピエラヌンツィであったことからも、アーティストの才能が伺えたというものでしたが、2012年にはファブリジオ・ボッソ、マリオ・ビオンディといったスターたちとの来日も話題になりました。 そんなフィリッピーニが、本作では先輩アーティストの胸を借りて急成長を見せています。エンリコ・ピエラヌンツィ、ジョン・テイラーを含めCAM JAZZのほぼすべてのプロデュースをつとめる、エルマンノ・バッソがこのトリオの仕掛け人。パレ・ダニエルソン、Olavi Louhiuoeiとの共演に、クラウディオは夢のようだ、と感じたとのこと。パレ・ダニエルソンは、ビル・エヴァンスとの共演歴を始め、キース・ジャレットのヨーロピアン・カルテット他、数々の歴史をつくってきたレジェンド。一方、オラヴィに関しては、クラウディオ自身、トマス・スタンコのクインテット他、ヨーロッパのピアノ・シーンを牽引するヨーナ・トイヴァネンのトリオで才能に惹かれていたのだとか。そして、その仕掛けは大成功をおさめます。 もともと、デビュー作の時点から、イタリア人ピアニストでありつつ、透明感のあるタッチが印象的であったクラウディオ。いわゆるヨーロピアンらしい感性の中にもピンと張りのある音には、ほの温かさの用な感じる音楽の中にも、独特なクールさがあり、ECMの世界にも通じたもの。パレの骨太なメロディ・ラインと、繊細なブラッシやきらめく様なシンバル・ワークが美しいオラヴィのドラミングと、ストーリー性にも満ちたトリオ・サウンドを描き上げて行きます。トリオの息もバッチリ!この作品のオープニングに据えられた''Nothi ng to Lose''はファースト・テイクであり、やり直しの必要性もまったくなかった、とのエピソードがライナー・ノーツにもありますが、トリオのコンビネーションはどの曲を聞いても抜群のものがあります。 クラウディオにとっては、録音前、自分自身の音楽的成長に疑問を持っていたとのことながらも、このレコーディングによって新しい世界と出会い、先が開けたのだとか。ピエラヌンツィという大巨匠を自国の先輩にもちつつ、一歩自分の個性を推し進めた感も。ベースのアルコなどもフィーチャーし流麗に絡む場面あり、クラシカルな中にもチェレスタを可憐に使ってPOPなリフを導入したり、オリジナルを中心にしたこのトリオには大きな可能性も感じさせられます。ヨーロピアン・トリオの新たなる一作。その筋のファンの方に、お薦めの一作です。
収録内容
1. Nothing to Lose 2. Scorpion Tail 3.Facing North 4. Landscape 5. Sonatina 6. Embraceable You 7. God Only Knows 8. Chasing Pavements 9. Soaking and Floating 10. Modern Times