寄稿コメント
ツアーファイナルの楽屋はジューシーな娘さんたちが入れ替わり立ち替わりで、それは大変な騒ぎでした。
そりゃロックバンドだからー。志磨クン達ったらしょうがないなーもー!なんて嘘です。
かれら音楽のことでいつも頭がいっぱいのストイックな人たちでした。才能があって、かつ勉強家で、みんなキラキラしてました。素敵な時間をどうもありがとう。私も頑張らなきゃ。というわけでシーユー!またね!
1995年のシングル「結婚相談所」でデビュー。一度聴いたら忘れられない印象的な歌声と、ジャズ、フレンチ・ポップ、歌謡曲などからの影響をにじませる”小島麻由美調”で熱狂的に支持されてきたシンガー・ソングライター。映画、ドラマ、CMなどへの曲提供も多く、NHKみんなのうた「ふうせん」(1999年)、任天堂北南米向けCM「はつ恋」(2001-2002年)、人気アニメ映画『ONE PIECE FILM GOLD』(2016年)のオープニング曲「GOLD & JIVE ~ SILVER OCEAN」などがある。現在は、10枚目となるオリジナルアルバムを鋭意制作中。
オリジナル作品を生み出し続けるということは、作者の作品歴そのものが物語になってしまうことでもあります。バンドマンだろうと小説家だろうと、その人がなんと呼ばれていようと、かつて何を生み出したのか、どうやってここに至ったのか、作品には作者の物語が様々な距離感ではあれ付き纏います。
その中には、作品が作者自身の物語と重なって見えるという状態があります。映像作品「どろぼう 〜dresscodes plays the dresscodes〜」は、その状態における最高峰の作品であると思います。志磨遼平さんが生み出した音楽を演じる為に志磨さんが生まれたのではないか、そんな矛盾が矛盾に思えなくなります。まるで生まれる前には一つの存在だった二人がこの世界で再び出会うように、我々は志磨さんと彼の音楽が再び一つになる瞬間をステージ上から見せつけられるのです。こんなロマンチック、他に想像出来ません。
小説家。高校時代より執筆活動を開始。『君の膵臓をたべたい』(2015)で小説家デビューを飾り、2016年「本屋大賞」第2位にランクイン。
鮮烈なデビューを飾った後、『また、同じ夢を見ていた』(2016)、『よるのばけもの』(2016)、『か「」く「」し「」ご「」と「』(2017)を執筆。近作では『青くて痛くて脆い』(2018)がある。
志磨遼平は踊る。
志磨遼平は叫ぶ。
志磨遼平は歌う。
志磨遼平は死ぬ。そして蘇る。
毛皮のマリーズからドレスコーズから、どろぼうへ。
僕らは志磨遼平の物語に生かされる。劇団志磨遼平の物語は、絶望を明るく笑い、希望に泣いて、本能に暮れる。
その悟りきった目線は、どう生きればいいのかわからなくなったこの時代の、この国の、僕らを、抱きしめてくれる。
騙されるな!
僕らは、彼に、踊らされている!
その薔薇の花は偽物で、この感情が本物だ!
見失うな!
彼は、どうやら不死身だ!
自分の人生を、生きるんだ!!
この芸術作品に、最大限の敬意と、愛を。
ありがとうございます。
松居大悟(ゴジゲン主宰・映画監督)
1985年福岡県生まれ。劇団ゴジゲン主宰。12年、『アフロ田中』で長編映画初監督。『スイートプールサイド』『私たちのハァハァ』など枠に捉われない作品を発表し、『ワンダフルワールドエンド』(15)でベルリン国際映画祭出品、『アズミ・ハルコは行方不明』(16)は東京国際映画祭・ロッテルダム国際映画祭出品。
今年3月に公開された74分1カットの『アイスと雨音』は大きな話題を呼び、最新作の『君が君で君だ』はロングラン上映中。
現在J-WAVE「JUMP OVER」(毎週日曜23:00〜)ではナビゲーターを務める。
彼が先般のtourでtryしたことは、目に見える変化を遥かに上回り本質的に彼の表現というものを変えてしまった。
音楽に物語を見出し、ライブに演出を施し、志磨遼平というrock starを演じるのを止めて、自身の書いた脚本の主演を演じるstoryの依り代であることを選ぶ。表現者として前に出つつ、志磨遼平という個人を仮面化・透明化する大きなturning pointとなる試みであったはずだ。
実際のliveを見て「想像以上に演ってんな」と驚いた。
試みのいちいちがclose upで見られる映像媒体での記録からより細密な彼の表現が検証できることを楽しみたい。
作家・演出家・翻訳家。1982年、福島県生まれ、千葉県柏市育ち。劇団DULL-COLORED POP主宰。明治大学演劇学専攻、ならびにイギリス・University of Kent at Canterbury, Theatre and Drama Study にて演劇学を学んだ後、劇団を旗揚げ。「斬新な手法と古典的な素養の幸せな合体」(永井 愛)と評された、ポップでロックで文学的な創作スタイルで、脚本・演出ともに幅広く評価を受けている。2018年にKAAT神奈川芸術劇場『三文オペラ』(上演台本・演出)を手がけた。
ロックスターをみつめる瞳は、いつだって、物語を探している。語られるもの、語られないもの、時代、感情、それらの間を埋め、つないでいくように、私たちはステージにいるその人を、目で追う。そこにあるものは、幻も現実もないまぜになった、真実だろう。そうした形でしか見えないものがあることを、知っていて、私たちはだからステージに惹かれていく。
勝手に、私たちは探していたんだ、物語を、幻を。けれど、その瞳を、志磨さんは射抜くように見つめ返してきていた。そうして、私たちがステージを見上げ、ライトの眩しさの中でかき集めていた幻を、巨大な花束として、一つの確かな作品として、私たちに投げ返してくれた。こんな幸せなことが、あるんだなあ。ステージを見つめるというそのことの意味が、価値が、更新されていく。そんな時間でした。ロックが好きでよかったです。
詩人。中原中也賞・現代詩花椿賞などを受賞。主な詩集に『夜空はいつでも最高密度の青色だ』『グッドモーニング』などがある。最新刊は『天国と、とてつもない暇』。
2018年1月に私が芸術監督を務めるKAAT神奈川芸術劇場で、ドイツ演劇の巨人ベルトルト・ブレヒトの「三文オペラ」を気鋭の若手演出家、谷賢一の手により上演された。その折、音楽監督を務めてくれたのが志磨遼平だった。独特の世界観を持つクルト・ヴァイルの音楽をアレンジし、さらに大胆不敵に訳詞したのも志磨だった。譜面を見た時、音楽のアレンジと歌詞の調製に驚きを隠せなかった。言葉のリズム、語彙の感覚が独特で、今まで日本で見てきた「三文オペラ」のどれでもなかった。
そして、今回のライブ映像だ。これはなんだ!明らかに「三文オペラ」の延長線上にあるではないか。この演劇的空気感はなんだろう。「三文オペラ」の経験が内在していた魂と化学反応を起こしたのかもしれないが、それにしても明らかになったのは、志磨遼平は演劇的な人間であるということだ。確かに音楽と演劇は近いところにある。だから、音楽家が演劇的な表現を追求することはある。しかし、志磨は違う。元々演劇的である者が、音楽によって自己を表現していることが、このライブ映像を見れば明らかなのだ。ふふふ、私は嬉しくて仕方が無い。志磨遼平、演劇人宣言万歳!
白井晃(演出家・KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)
1983〜2002年「遊◎機械/全自動シアター」主宰。美意識の高い緻密な演出で定評があり、ストレートプレイから、ミュージカル、オペラまで幅広く手掛ける。近年の演出作品に、『バリーターク』(18)、『オーランドー』(17)、『春のめざめ』(17)、『マハゴニー市の興亡』(16)など。出演作品に『三文オペラ』(18)など。読売演劇大賞優秀演出家賞、湯浅芳子賞[脚本部門]、佐川吉男音楽賞受賞。2016年4月、KAAT神奈川芸術劇場芸術監督に就任。
遊◎機械/全自動シアターの「◎」の中の小さい○は●が正式表示です。
芝居を創る時は、いつもたくさんのCDを聴きます。自分の芝居に使わせてもらえる曲がないかなと探しているのです。
『妄想でバンドをやる』を聴いた時、「おおっ!」と感動しました。かっこいいじゃないか、素敵じゃないかと震えました。
続いて『マイノリティーの神様』にも震えました。知らないうちにブレヒトの『三文オペラ』で演劇界に来てくれていて、嬉しくなりました。今回のライブはとっても演劇的です。志磨さんは役者をやりたいのかなと思います。
すっごく細い役者ですね。声もいいと思います。
作家・演出家。早稲田大学法学部出身。
1981年に劇団「第三舞台」を結成し、以降、作・演出を手がける。現在はプロデュースユニット「KOKAMI@network」 と「虚構の劇団」を中心に活動。これまで紀伊國屋演劇賞、岸田國士戯曲賞、読売文学賞など受賞。演劇の他には、エッセイスト、小説家、テレビ番組司会、ラジオ・パーソナリティ、映画監督など幅広く活動。近著に「不死身の特攻兵〜軍神はなぜ上官に反抗したか〜」(講談社現代新書)など。
小島麻由美
ツアーファイナルの楽屋はジューシーな娘さんたちが入れ替わり立ち替わりで、それは大変な騒ぎでした。
そりゃロックバンドだからー。志磨クン達ったらしょうがないなーもー!なんて嘘です。
かれら音楽のことでいつも頭がいっぱいのストイックな人たちでした。才能があって、かつ勉強家で、みんなキラキラしてました。素敵な時間をどうもありがとう。私も頑張らなきゃ。というわけでシーユー!またね!
■Profile 小島麻由美(こじま まゆみ)
1995年のシングル「結婚相談所」でデビュー。一度聴いたら忘れられない印象的な歌声と、ジャズ、フレンチ・ポップ、歌謡曲などからの影響をにじませる”小島麻由美調”で熱狂的に支持されてきたシンガー・ソングライター。映画、ドラマ、CMなどへの曲提供も多く、NHKみんなのうた「ふうせん」(1999年)、任天堂北南米向けCM「はつ恋」(2001-2002年)、人気アニメ映画『ONE PIECE FILM GOLD』(2016年)のオープニング曲「GOLD & JIVE ~ SILVER OCEAN」などがある。現在は、10枚目となるオリジナルアルバムを鋭意制作中。
松居大悟
志磨遼平は踊る。
志磨遼平は叫ぶ。
志磨遼平は歌う。
志磨遼平は死ぬ。そして蘇る。
毛皮のマリーズからドレスコーズから、どろぼうへ。
僕らは志磨遼平の物語に生かされる。劇団志磨遼平の物語は、絶望を明るく笑い、希望に泣いて、本能に暮れる。
その悟りきった目線は、どう生きればいいのかわからなくなったこの時代の、この国の、僕らを、抱きしめてくれる。
騙されるな!
僕らは、彼に、踊らされている!
その薔薇の花は偽物で、この感情が本物だ!
見失うな!
彼は、どうやら不死身だ!
自分の人生を、生きるんだ!!
この芸術作品に、最大限の敬意と、愛を。
ありがとうございます。
松居大悟(ゴジゲン主宰・映画監督)
■Profile 松居大悟(まつい・だいご)
1985年福岡県生まれ。劇団ゴジゲン主宰。12年、『アフロ田中』で長編映画初監督。『スイートプールサイド』『私たちのハァハァ』など枠に捉われない作品を発表し、『ワンダフルワールドエンド』(15)でベルリン国際映画祭出品、『アズミ・ハルコは行方不明』(16)は東京国際映画祭・ロッテルダム国際映画祭出品。
今年3月に公開された74分1カットの『アイスと雨音』は大きな話題を呼び、最新作の『君が君で君だ』はロングラン上映中。
現在J-WAVE「JUMP OVER」(毎週日曜23:00〜)ではナビゲーターを務める。
白井晃
2018年1月に私が芸術監督を務めるKAAT神奈川芸術劇場で、ドイツ演劇の巨人ベルトルト・ブレヒトの「三文オペラ」を気鋭の若手演出家、谷賢一の手により上演された。その折、音楽監督を務めてくれたのが志磨遼平だった。独特の世界観を持つクルト・ヴァイルの音楽をアレンジし、さらに大胆不敵に訳詞したのも志磨だった。譜面を見た時、音楽のアレンジと歌詞の調製に驚きを隠せなかった。言葉のリズム、語彙の感覚が独特で、今まで日本で見てきた「三文オペラ」のどれでもなかった。
そして、今回のライブ映像だ。これはなんだ!明らかに「三文オペラ」の延長線上にあるではないか。この演劇的空気感はなんだろう。「三文オペラ」の経験が内在していた魂と化学反応を起こしたのかもしれないが、それにしても明らかになったのは、志磨遼平は演劇的な人間であるということだ。確かに音楽と演劇は近いところにある。だから、音楽家が演劇的な表現を追求することはある。しかし、志磨は違う。元々演劇的である者が、音楽によって自己を表現していることが、このライブ映像を見れば明らかなのだ。ふふふ、私は嬉しくて仕方が無い。志磨遼平、演劇人宣言万歳!
白井晃(演出家・KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)
■Profile 白井晃(しらい あきら)
1983〜2002年「遊◎機械/全自動シアター」主宰。美意識の高い緻密な演出で定評があり、ストレートプレイから、ミュージカル、オペラまで幅広く手掛ける。近年の演出作品に、『バリーターク』(18)、『オーランドー』(17)、『春のめざめ』(17)、『マハゴニー市の興亡』(16)など。出演作品に『三文オペラ』(18)など。読売演劇大賞優秀演出家賞、湯浅芳子賞[脚本部門]、佐川吉男音楽賞受賞。2016年4月、KAAT神奈川芸術劇場芸術監督に就任。
遊◎機械/全自動シアターの「◎」の中の小さい○は●が正式表示です。
住野よる
オリジナル作品を生み出し続けるということは、作者の作品歴そのものが物語になってしまうことでもあります。バンドマンだろうと小説家だろうと、その人がなんと呼ばれていようと、かつて何を生み出したのか、どうやってここに至ったのか、作品には作者の物語が様々な距離感ではあれ付き纏います。
その中には、作品が作者自身の物語と重なって見えるという状態があります。映像作品「どろぼう 〜dresscodes plays the dresscodes〜」は、その状態における最高峰の作品であると思います。志磨遼平さんが生み出した音楽を演じる為に志磨さんが生まれたのではないか、そんな矛盾が矛盾に思えなくなります。まるで生まれる前には一つの存在だった二人がこの世界で再び出会うように、我々は志磨さんと彼の音楽が再び一つになる瞬間をステージ上から見せつけられるのです。こんなロマンチック、他に想像出来ません。
■Profile 住野よる(すみの よる)
小説家。高校時代より執筆活動を開始。『君の膵臓をたべたい』(2015)で小説家デビューを飾り、2016年「本屋大賞」第2位にランクイン。
鮮烈なデビューを飾った後、『また、同じ夢を見ていた』(2016)、『よるのばけもの』(2016)、『か「」く「」し「」ご「」と「』(2017)を執筆。近作では『青くて痛くて脆い』(2018)がある。
谷賢一
彼が先般のtourでtryしたことは、目に見える変化を遥かに上回り本質的に彼の表現というものを変えてしまった。
音楽に物語を見出し、ライブに演出を施し、志磨遼平というrock starを演じるのを止めて、自身の書いた脚本の主演を演じるstoryの依り代であることを選ぶ。表現者として前に出つつ、志磨遼平という個人を仮面化・透明化する大きなturning pointとなる試みであったはずだ。
実際のliveを見て「想像以上に演ってんな」と驚いた。
試みのいちいちがclose upで見られる映像媒体での記録からより細密な彼の表現が検証できることを楽しみたい。
■Profile 谷 賢一(たに けんいち)
作家・演出家・翻訳家。1982年、福島県生まれ、千葉県柏市育ち。劇団DULL-COLORED POP主宰。明治大学演劇学専攻、ならびにイギリス・University of Kent at Canterbury, Theatre and Drama Study にて演劇学を学んだ後、劇団を旗揚げ。「斬新な手法と古典的な素養の幸せな合体」(永井 愛)と評された、ポップでロックで文学的な創作スタイルで、脚本・演出ともに幅広く評価を受けている。2018年にKAAT神奈川芸術劇場『三文オペラ』(上演台本・演出)を手がけた。
最果タヒ
ロックスターをみつめる瞳は、いつだって、物語を探している。語られるもの、語られないもの、時代、感情、それらの間を埋め、つないでいくように、私たちはステージにいるその人を、目で追う。そこにあるものは、幻も現実もないまぜになった、真実だろう。そうした形でしか見えないものがあることを、知っていて、私たちはだからステージに惹かれていく。
勝手に、私たちは探していたんだ、物語を、幻を。けれど、その瞳を、志磨さんは射抜くように見つめ返してきていた。そうして、私たちがステージを見上げ、ライトの眩しさの中でかき集めていた幻を、巨大な花束として、一つの確かな作品として、私たちに投げ返してくれた。こんな幸せなことが、あるんだなあ。ステージを見つめるというそのことの意味が、価値が、更新されていく。そんな時間でした。ロックが好きでよかったです。
最果タヒ(さいはて たひ)
詩人。中原中也賞・現代詩花椿賞などを受賞。主な詩集に『夜空はいつでも最高密度の青色だ』『グッドモーニング』などがある。最新刊は『天国と、とてつもない暇』。
鴻上尚史
芝居を創る時は、いつもたくさんのCDを聴きます。自分の芝居に使わせてもらえる曲がないかなと探しているのです。
『妄想でバンドをやる』を聴いた時、「おおっ!」と感動しました。かっこいいじゃないか、素敵じゃないかと震えました。
続いて『マイノリティーの神様』にも震えました。知らないうちにブレヒトの『三文オペラ』で演劇界に来てくれていて、嬉しくなりました。今回のライブはとっても演劇的です。志磨さんは役者をやりたいのかなと思います。
すっごく細い役者ですね。声もいいと思います。
鴻上尚史(こうかみ しょうじ)
作家・演出家。早稲田大学法学部出身。
1981年に劇団「第三舞台」を結成し、以降、作・演出を手がける。現在はプロデュースユニット「KOKAMI@network」 と「虚構の劇団」を中心に活動。これまで紀伊國屋演劇賞、岸田國士戯曲賞、読売文学賞など受賞。演劇の他には、エッセイスト、小説家、テレビ番組司会、ラジオ・パーソナリティ、映画監督など幅広く活動。近著に「不死身の特攻兵〜軍神はなぜ上官に反抗したか〜」(講談社現代新書)など。