古楽界の大御所ウィリアム・クリスティはフランス・バロック音楽、特にオペラと声楽作品の復興に多大な貢献し、現在の古楽界に大きな影響を与えています。 本アルバムは、ランベール、シャルパンティエら17世紀フランスの作曲家による歌曲集。16世紀後半から17世紀中期にかけてフランスの上流階級で流行した「エール・ド・クール(世俗歌曲)」を収録したアルバム。エール・ド・クールの中心的な作曲家ランベール、シャルパンティエの作品は、フランス・バロックの開花初期の素朴な美しさが魅力。いずれも哀愁を帯びた旋律、それにヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュートの低旋律、和声、リズムを効果的に掛け合わせ情熱的に聴かせます。特にアルバムのタイトルにもなっているランベールの「愛は苦しみ(Bien que l'amour...)」は優美で洗練されたランベールの特徴が最も現れた美しい楽曲。そしてフランス・バロック中期から後期の代表的な作曲家F.クープランや、ルイ14世のシャペル付楽団のオルガニスト、シャバンソー・ド・ラ・バール、ランベールの弟子のオノレ・ダンブリュイの作品も収録。 このアルバムに収められている作曲家たちは、同時代フランス・バロックとは言っても、フランス・ルイ王朝の栄華期に活躍したランベール、ラ・バール、シャルパンティエと衰退を見せた時期に活躍したダンブリュイ、F.クープランという2世代に分けられ、その対比を、音楽と詩という当時最も豊かであった文化を組み合わせた歌曲という分野で表面化させたプログラミングも、さすがクリスティと思わせるポイントです。